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たまたま出先で立ち寄った書店で手に取った

「傷だらけの店長 街の本屋24時」。

この本の単行本が出版された頃はまだ本屋さんのアルバイトをしていた。

だから、他の書店の内情を知りたいような、知りたくないような気がして、

手に取ることを躊躇していた本。

この文庫版を見つけた今日は、私が「本屋さんの仕事」から離れてからもう1年以上経っている。

ナルホド、ホカノホンヤサンモ、ヤッパリタイヘンナンダネー、

くらいの軽い感想で読み通せるかと思ったけれど、

読み進めば、想像以上に過酷な街の本屋の現状が、

次のページを読むのがシンドイくらいの日々が綴られていた。

 

私にとって「目の前でモノを売る」仕事=小売りの仕事は、

1年前まで勤めていた本屋での仕事が初めてだった。

それまでレジすら触ったことがない。

本を読むことは子供のころから好きだけれど、店に立ってみて思ったのは

何にも知らないし、何も読んできてないんだな、ということだった。

 

私が立っていたのは、本当に小さな書店だ。

実にのんびりして見える趣味的本屋ではあったが、

そこでの4年間、

売ること、売れること。

店に偶々もしくは目指して来て下さるお客様や、常連の方々のこと。

いろんな新刊・新商品、企画を持ち込んで下さる皆さんとのこと。

日々店を訪れるひとたちとの関わりの中から、

何がこのお店らしいのか、どうやったら売上が伸ばせるのか、魅力は何か。

どうやったらお客さんがわざわざ店に足を運び、且つレジまで商品を持って来てくれるのか。

いろいろ考えて実行したつもりだったけれど、

ただ「なんとなくの勘」に頼って右往左往しただけだったな、と思う。

 

あの4年間で、やったこと、やらなかったこと、

やれなかったこと、やるべきだったこと、

この本を読んで、交々思い出す。

 

結局のところ、

誰かに財布を開かすまでに至るのは非常に難しいことだ、

という当たり前の事実を再認識しただけだったりする。

成長してないね。

 

 

2013.9