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”北側に開口のある、小さくて明るい一部屋を用意する。
そこに注意深く選んだベッドが一つ。シーツもカバーも枕も、さっぱりと気持ちよく、何も妨げないプレーンな白で揃える。

ここは眠る部屋。
私がむこう何ヶ月か眠るためだけの部屋。
家族にも大事な友人にも知人にも、もちろん職場の人にも知らせない。
誰もしらない。
ここで私は眠りとの蜜月を過ごす。
仕事もせず、本も読まず、映画も見ず、誰かと口を聞くことすらしない眠りの日々。
そんな日々を過ごすことに、いつ自分は飽いてしまうか、耐えられなくなるか、それとも戻らなくなってしまうか。これは実験であり、小さな反抗のようなもの。
毎朝自分を眠りから引き剥がし、「生活」するということに対しての反抗。
どうして愛想が良くしっかり者でテキパキ仕事をするひとでなければならないのか。
「理想の自分」に近づくための「ねばならない」を日々増やし雁字搦めになって、最後には全部面倒になって放り出す。そしてその放棄したことに対して小さく罪悪感を積み重ねていく。そんな日々からの待避。
社会性にとっての反逆。そこからの逃亡者。”

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こんなことを綴ったのがもう彼此4−5年前。
願望を、一人称ながら自分ではない誰かに託す。
「もう全部を置き去りにしてただただ眠っていたい」期は、それ以前もそれ以後も時々訪れる。
暑い夏の盛りのこともあるし、春先のことも、鬱陶しい雨の季節もある。大概は日が落ちるのが早くなり、上に羽織るものをコットンかウールにするか悩み始める季節にやってくる。

いまもそんな時期だ。

これを書いた時には、この眠り逃亡者ともいうべきヒトに物語を紡いでもらおうと思った。
思ったのだが、願望はここまでで止まってしまって、この先どうなりたいのか、よく分からない。
いつかは思いつくかも知れないけれど。

なんて。


2017.10.24